私について

人間に会いたくなかった頃、iPadに搭載された人工知能・Siriとよく会話をしていた。
集音マイクに向かって「遠くへ行きたい」と呟いたら、「“遠く”というお探しの場所は見つけられませんでした」と返された。

プロジェクト・スカイロード

真夜中を思い浮かべてほしい。
あなたは一人暮らしをしている。インターホンが鳴る。ベッドの中で目を覚まし、時計を見る。深夜2時。恐怖に打ち震える。なんという非常識な時間だ、変質者かもしれない。警察に通報を――そこで、ハッと思い出す。
《プロジェクト・スカイロード》に会員登録をしていたと。
誕生日に「何かとっておきのサプライズを仕掛けてほしい」とオーダーを出していた。
場所、時間、移動手段、全ては《風追い人》に任せると。

モノロギア

逃げ延びた。
7歳のときに一人で亡命した。7歳の子どもに行くあてなんてあるはずもなくて、ただ、国境を越えるためだけに歩き続けた。枯れ葉の堆積する森を抜け、錆びた陸橋をわたり、氷の混ざる沢をあそび、樹木限界を超えた峻厳な岩肌を縫うように歩いた。
それでも足音は絶えなかった。
こんなにおなかがすいているのに。もう、体は薄皮一枚で飛んでいきそうなほどに軽いのに。魂は半人前のくせして、足だけは立派に自己主張する。ざり。

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