書籍案内

血と灰の上に、
樹を植える。

かつて火を放った地に、王は種を蒔く。

あらすじ

かつて火砕流で他国の兵を焼き尽くした王国アーレンベルク。
惨禍から五十年。平和を手にした国に、再び問われるのは「赦し」だった。
戴冠したばかりの若き王ソフィアは、祖先の罪を背負いながら、滅びの地に樹を植える森林再生計画を命じる。
実務を担うのは、東方から来たひとりの青年――
紺鳶色の瞳を持ち、左頬に古い傷を刻む留学生、タツキ・アメミヤだった。

華やかな宮廷でも、剣や魔法の戦いでもない。
水と風と土、そして人間の矜持の物語。

自然と経済、政治と祈りが交錯するなか、
贖罪を願う少女と、権力を嫌う青年が巡り会う。
それぞれの信念を胸に、森の奥へと踏み込んだ先に待つものは――。

著者紹介

ナディア・アーレンベルク(幻著/原著)
アーレンベルク北部の狩猟家の町に生まれる。
10歳の時、隣国ヴィッセンへ亡命。
その経緯とアーレンベルク家の歴史を綴った『王の庭師(原題:Gärtner des Königs)』シリーズは祖国で出版を禁じられた。現在はアデルフィル山地の麓、ノルドアーレン県で物語を紡ぐ。

久利生杏奈(ヴィッセン語幻訳/編纂)
紅龍渓谷で古い書庫を営む。
ヴィッセン語、アーレンベルク語、鳳華語など、この世界ではあまり聞き慣れない言語を取り扱う。

ヴィッセン語?

アーレンベルクの公用語は四つあります。
高地アーレンベルク語、低地アーレンベルク語、キルブルク語、そしてヴィッセン語。

ヴィッセン語は、隣国ヴィッセン連合王国の公用語でもあります。
公国の最南端にある名高い狩猟地(ジャン・ブラッドマン氏の私有森)をさらに南へ進むと、ヴィッセン連合王国の広大な領土が見えてきます。物語の著者・ナディアは、10歳でヴィッセンに亡命して以来、ヴィッセン語を母語として育ちました。そのため、市中に出回っている『王の庭師』(原題:Der Gärtner des Königs)アーレンベルク語版は、すべて逆輸入された翻訳書です。
紅龍堂書店では、久利生杏奈がこの幻想世界の言語体系を編纂し、皆様がお読みいただけるよう日本語へ整えています。

ようこそ、幻想の彼方へ

制作背景

かつて森に火を放った国が、贖罪の象徴として樹を植える。
『王の庭師』は、自然と人のあわいに祈りを見出す、峻厳な幻想文学です。戴冠したばかりの未熟な王ソフィアと、権力を嫌う東方の留学生タツキ。二人の視点を通して描かれるのは、華やかな宮廷でも、剣や魔法の戦いでもなく、“赦しと再生”をめぐる人と動植物の物語です。森の呼吸、水の匂い、光の粒まで感じられる緻密な生態系描写は、『もののけ姫』『獣の奏者』などに心を動かされた読者層から高い評価を受けています。
試験的に刷った100部は直販のみで完売。
「どの登場人物も誰かを救おうとしている。優しいのに甘くない」「森が迫ってくる」「大人になってファンタジーに泣かされるとは思わなかった」といった読者の声が届いています。

新装版

本作はこの100部版を原型にしつつ、時代の変遷を踏まえて表現を丁寧に見直し、2025年版として再構成したものです。それに伴い版型もA6からB6へリニューアル。カバーデザインも、世界観を肌で感じていただけるよう刷新しました。448ページという長編に没入していただけるよう、本文用紙は軽量でいながら視認性・手触りに優れた書籍用紙を採用。
久しぶりにアーレンベルクの森へ戻ってきてくださる方にも、今回初めて訪れる方にも、旅に出るような気持ちで読んでいただければ嬉しく思います。

書誌情報

【書籍名】王の庭師 アーレンベルクより愛をこめて
【原著】ナディア・アーレンベルク
【編纂】久利生杏奈
【発行元】紅龍堂書店
【発売元】瀬谷出版株式会社
【発売予定日】2025年12月18日
【仕様】B6判/並製/448ページ
【ISBN】978-4-902381-47-4
【定価】本体2,250円+税(税込2,475円)
【配本】全国書店・主要オンライン書店、公共図書館
※本書に関する取材・コメント等は、発行元の紅龍堂書店にて受け付けています。