AGE

理念は
時代を越えていく。

「忘れたことなんて一度もないよ」

おとぎの国の物語?

紅い龍は、せせら笑いました。
「社会貢献? 正気? 可哀想な人を見つけて満足? 弱者に手を差し伸べる自分に酔って楽しい? 感謝された言葉は全部本物だとでも思ってる? 頭沸いてんじゃないの? 親を殺した相手に『ありがとう』って言ったことある? 『ありがとう』って言わないとごはんが貰えなかったことは? 『助けてください』の本心が奪い返したいっていう憎悪だったら? あんたはいつまで続けられる? 餌目当ての野良猫に『懐かれた』と喜ぶ人間が道化なら、本当にしたたかなのはどっちかしらね。賭けてもいいけど、いつか手を噛まれるわよ。その瞬間を喜べないならあんたが人間じゃない。『助けてやったのに恩を仇で返しやがって』と、吠える獣の顔が見ものよね」

誰を助けたいのよ、本当は。

笑った口からのぞいた牙は、錆びてギチギチと嫌な音を立てました。
「あんたにあたしの何が解る。過去も知らず、未来も知らず、ほんの一瞬手を差し伸べるだけの気まぐれを『友情』なんて言葉で飾るな。夢物語は人間の茶番だけで充分なのよ。あんたみたいな独りよがりをなんて呼ぶか知ってる? 友達? 笑わせないで。あんたはあたしと同じ時間を生きてない。過去なんてどうでもいいし、未来はもっとどうでもいいわけだ。今さえ良ければいい輩が、外から無責任に茶々入れることが『友達』? 通りすがりの間違いでしょう。通りすがりは通りすがって死んでいけ」

「ふざけろ」

人間にしかできないことがある

紅龍堂書店は、物語の力を信じています。フィクションでも、存在しなくても、過去を変えることができなくても、未来を救うことが難しくても。物語は、目の前の誰かの心を拾い上げます。それで充分だし、それ以上になるべきではないとも考えます。物語は、説教ではありません。政治のためのプロパガンダでもありません。娯楽です。その娯楽は、過去でも未来でもなく、今、この瞬間を生きている人に届かなければ意味がありません。つまり、あなたに。

幻想書店が、社会問題に向き合う理由

優れたファンタジーは、そこに丸ごと一個、世界が存在しているかのように感じられます。その世界で呼吸し、歩き、本を読み、生活している誰かがいると「信じられる」こと。逆説的ですが、ファンタジーは浮世離れしていてはいけません。たとえどんなに現実と乖離していても、時代が遠くても、共感できなければなりません。主人公が人間である限り、抱える問題は感情に通底します。今を生きている人たちの葛藤を無視して、胸を打つ物語などありえないと、私たちは考えます。