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大雨時行

「やっぱ大事なのはね、自分が『もうだめかも』と思ったそこからがスタートでございます。そこからどんだけ頑張れるかで、たぶん自分の限界が決まると思います」

2015年6月21日の走り書き。
珍獣ハンター、という肩書きを今も使ってらっしゃるのかは分からないけれど、イモトアヤコさんの言葉で、連想したのは18世紀のイギリスの海軍士官、ジェームズ・クック。キャプテン・クックと言えば大航海時代の海洋探検家として喧伝されているけれど、その華々しい実績からは想像もつかないほど、彼の残した文章は簡素だ。クックの航海日誌には、必要最低限の事務連絡しか残されていない。自分の「功績」になんてまるで興味もなさそうな素っ気ない文体。もっとも、その無頓着な「功績」の果てに、七年戦争が起き、見渡せる限りの地平が植民地とされて、日の沈まない帝国が成っていくのだけれど。
そのことをクックは知っていたのでしょうか。
どこまで、自覚的でいたのでしょうか。
まさか本当に何も興味が無かったわけないでしょうと、私は思ってしまうけれど、それは自分の願望なのか。あの好意的な、地味で朴訥とした文章を書いた青年にも、人並みの野心や邪な心が宿っていたと思いたいのか。
そう思うことで安心したいのか。
所詮、人の書き記すものに意味なんてないし、人の言葉だけが高尚であるかのように錯覚することもおこがましいし、ことさら心の辻褄を合わせるためだけに公に書き記すのだとすれば、不健全で不誠実だ……という自覚も、嫌悪感も、あるのだけれど。
それでも、正しいだけの物語ほどつまらない駄作はない、と一行を形にしたとたん、軋む心とどう向き合えばいいのか。
優しく在りたいです。
もう一度、どんなに苦しくても、たぐり寄せるところから。

こんにちは。紅龍堂書店の久利生杏奈です。
あなたは今日、どんな一日を過ごしましたか。その一日のほんの一瞬の中にでも、私を存在させてくれてありがとう。覚えていてくださって、どれほど嬉しいか。出会えたことが、どれほど喜ばしいか。伝える言葉の少なさを歯噛みしながら、これからも探していきます。
きっとまた、遊びにいらしてくださいね。

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