玄鳥至(つばめきたる)
こんにちは、紅龍堂書店(くりゅうどうしょてん)の久利生杏奈(くりゅうあんな)です。
二十四節気では春分が終わり、清明という季節に入りました。
七十二候では「玄鳥至(つばめきたる)」
玄鳥至(つばめきたる)の意味は文字通りです。
ツバメは渡り鳥ですからね。なかなか外を出歩く機会がありませんが、ウグイスと並んで、紅龍堂の近くでもよく見かけるようになりました。
清明は、「清浄明潔」を略した言葉。
江戸時代の『暦便覧』には、「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也」と記されています。訳は「あらゆる生命が息吹き、春の陽を受けて、清らかに溌剌とし始める。この小さな芽がなんの草木かもすぐに知れる」といったところでしょうか。
春の、勢い盛んな命の頃、という意味合いです。
――と書きながら、「ウイルスには命がない」と思い出してぞっとする今日この頃です。
ウイルスの語源はラテン語の「virus」。
毒液や粘液を意味する言葉です。
細菌には細胞がありますが、ウイルスには生命の最小単位である細胞が存在しません。そのため、「非生物」と定義されることもあります。ウイルスは自身に細胞がないため、他の生物の細胞に入り込み、コピーを増殖することで「生きて」いきます。
あらゆる「生命」が息吹くはずの清明に、「非生命」が猛威を振るっている。
そんな時代に、私たちは生きているのですね。
そう考えると凄絶ですが、今まで隣り合わせでなかったことが幸運なだけなのかもしれないと考えると複雑です。
天然痘こそ根絶されましたが、ペストは今も感染が続いています。2004~2015年で世界で56,734名が感染、死亡者数は4,651名(死亡率8.2%)
エボラも然り。
アフリカを始めとする密林地帯では、コロナ以前から、様々な病原体と「共生」せざるをえない状況が続いています。
そうした、世界の「片隅」に置き去りにし続けていた出来事と、今、ようやく向き合わざるを得なくなりました。
良くも悪くも、他人事ではなくなりました。
『FUCT FULNESS』という本があります。
様々な統計を元に、世界は「良くなっている」という主張を繰り返している本です。
例えば、1965年に比べると、2017年では先進国が増え、いまだに途上国と呼ばれる国は全人口の6%、13ヵ国しかないという事例を取り上げ、
「だから世界は良くなっている」
と結ぶ本。
ビル・ゲイツを筆頭に、起業家や、いわゆる「意識高い系」と揶揄される若者の間で大絶賛されていたのですが、私は全く共感できませんでした。
今も世界のどこかで苦しんでいる人たちを、6%「しか」いないと切り捨てる感性に強い疑問と、嫌悪感が湧きました。
今、大混乱に陥っている世界の報道を見ていると、たまに言いようもなく心が冷えます。
しっぺ返しを見ているような気持ちになるのです。
そして、そんな自分に少し凹みます。私は何様なのだろうと。
明日は始業式です。
子どもたちに罪はありません。
感染は拡大し続けています。
恐らく、私たちが思っているよりもずっと脅威的なスピードで。
どうか、親御さんは悔いのない判断を。今、このタイミングで、命を危険に晒してまで校長先生の話を聞きに行かせる意味は、少なくとも私の頭では思いつけません。
最後に、それでも私は、命あるものの力を信じています。
二十四節気・七十二候が六世紀から語り継がれて来たことも、一つの希望の象徴に他なりません。
今よりもっと苛酷な時代も、人類は負けずに生き延びてきました。
今この瞬間も、世界中で、少なくとも20種類のワクチンが猛然と研究開発され続けています。それこそ、かつてないスピードで。
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