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日の出直前の空が赤や紫に染まり、奥に連なる山々が黒く影を落としている。手前には湖が広がり、水面にも空の色が映り込んでいる。画面右下には草花が揺れており、静かな朝の始まりを感じさせる構図。

「ありがとう」が測られる世界で

こんにちは、紅龍堂書店の「久利生杏奈」です……という書き出しで「うん?」となった方は、こちらをご覧いただけると嬉しいです。
当レーベルは2020年より、虚構と現実の境界線をコンセプトに文芸作品を作っています。

先日の投稿に反応してくださった皆様に、まずは心から御礼申し上げます。
正直、長らくSNSから離れていたうえに、アルゴリズムもすっかり変わってしまった今、誰にも届かないのでは……と投稿直前まで緊張していました。思いがけず多くの方からお声かけいただけて、心底ほっとして、こみ上げてくるものがありました。怪我のことまで気遣っていただき、ただただありがたく身に余る思いです。
久しぶりすぎる投稿だったため、上手く返信できるか自信が持てず、X(旧Twitter)ではリプライ制限をかけてしまったのですが、いいねやRT、引用という形で言葉を添えてくださった皆様、またエアリプも(自意識過剰だったらごめんなさい!)、本当にありがとうございます。

ほんの少し前まで、SNSはもっと気軽に「ありがとう」と言い合える場所だったように思います。コメントに気づけば、何も考えず、ただ感謝を伝えるだけでも自然なやり取りとして成立していました。
けれど今は、「ありがとう」という一言ですら、アルゴリズムによって“得点”とされる世界に変わっています。
2023年、X(旧Twitter)はイーロン・マスク氏の方針により、一部の推薦アルゴリズムをGitHub上でオープンソース化しました。その後も数度の更新が重ねられ、現在はユーザーの行動が内部スコアに基づいて評価される仕組みが明らかになっています。
たとえば、

・他人からのブロックやミュート: アカウントの「健康度スコア」を下げる要因
・リプライ、いいね、引用リポスト: 投稿の可視性(見られやすさ)を上げる要因
・ポジティブなリアクションの多さ: ツイートが「推薦候補」に含まれやすくなる

さらに、X Premium(旧Twitter Blue)ユーザーは、これらの加点が強化される傾向があり、非課金ユーザーよりもアルゴリズム的に有利な立場に置かれています。

もちろん、アルゴリズムがあることで投稿の整理や最適化が進み、混沌を避けられるという利点はあります。ですが、それによって「すべての行為に意味がある」とされる設計は、時に疲労感を伴います。
誰かに対して、純粋にお礼を伝える。それだけのつもりで書いた「ありがとう」が、「この人と親しい」「この投稿は好意的」「このアカウントを支援している」といった信号として記録される。
言葉が、気持ちではなく“効果”で測られる。
その瞬間、どうしても「言いたいこと」と「言うべきかどうか」の間に、余計な距離が生まれます。

さらに、こうした“行動の評価”に基づく表示最適化は、結果的にエコーチェンバー(共鳴室)を生みやすくします。見たいもの、心地よいものばかりが優先的に表示される一方で、異なる立場や表現が徐々に除外されていく。
アルゴリズムによる「沈黙の設計」は、気づかぬうちに世界の見え方を変えてしまいます。
先日の記事では主にLLM(大規模言語モデル)への懸念を書いたのですが、そもそものSNSのこうした仕様にも疑念は尽きません。

当ブログのコメント欄は、これまでずっと閉じたままでした。匿名性の高い空間で、心ない言葉が突き刺さった経験が一度ならずあるからです。
しかし皮肉な話、今となってはブログツールが最も炎上リスクが低く、安心して話せる場所なのかもしれません。
SNSと異なり、ブログは拡散アルゴリズムを持たず、自動で他人の目に触れることがありません。また、投稿ごとにコメント欄の開閉や表示範囲の設定ができるため、他者との距離感を自分の手で調整できる点も大きな利点です。結果として、トラフィックは少なくとも、心をすり減らす危険は格段に低いように感じています。
先日のように、久しぶりの投稿にもかかわらず、真摯に言葉を受け取ってくれる方がいるのを感じたことで、やはりオンラインでも安心して話せる場所が欲しいと、少し欲が出てしまいました。
いまはまだ、コメント欄を「開く」と決めるには少し勇気が足りないのですが、どうしたら安心してやりとりできるかを、もう少しだけ考えてみようと思います。

最後に、アルゴリズムへの忖度抜きに! 改めて御礼を言わせてください。ここまで読んでいただきありがとうございます。
この場所が、あなたにとってもまた、少しでも静けさの助けになればと思います。
今日も、どうか無理のない一日でありますように。

久利生杏奈

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