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葭始生(あしはじめてしょうず)

こんにちは、紅龍堂書店(くりゅうどうしょてん)の久利生杏奈(くりゅうあんな)です。

穀雨(こくう)に入りましたね!
農家としては大変感慨深いです。今年もこの季節がやってまいりました。
苗代を植える時期ですからね、緊張感が高まります。

特に紅龍堂は山の近くですから。
「八十八夜の別れ霜」という言葉があるように、濃霧が多発します。
詳しいことは、今年の八十八夜に該当する5月1日辺りにまた書ければいいなと思っています。
(田植えの時期と相談ですが、苦笑)

七十二項では、葭始生(あしはじめてしょうず)という季節です。
葭は葦、お馴染み、水辺の草ですね。
――と書きながら思い出すのは、「人間は考える葦である」というパスカルの言葉。パスカルはフランスの哲学者ですが、七十二候と比べるにつけ、つくづく東西の価値観の違いを感じます。
原文から一節を引用しますね。

“L’homme n’est qu’un roseau, le plus faible de la nature ; mais c’est un roseau pensant. Il ne faut pas que l’univers entier s’arme pour l’écraser : une vapeur, une goutte d’eau, suffit pour le tuer. Mais, quand l’univers l’écraserait, l’homme serait encore plus noble que ce qui le tue, puisqu’il sait qu’il meurt, et l’avantage que l’univers a sur lui ; l’univers n’en sait rien. Toute notre dignité consiste donc en la pensée. C’est de là qu’il faut nous relever et non de l’espace et de la durée que nous ne saurions remplir. Travaillons donc à bien penser : voilà le principe de la morale. (B.347, L.200) ” Blaise Pascal, Pensées

「人間は一本の葦にすぎない。自然界で最も脆弱な草だ。だが、人間は考える葦だ。葦を押し潰すのに、宇宙は武装するまでもない。一吹きの蒸気、一滴の水だけで、簡単に殺せる。それが考える葦だろうと変わらない。だが人間は、宇宙よりも高貴たりうる。なぜなら人間は、自分が死の間際にいること、宇宙が自分よりも有利であることを知っているからだ。宇宙は何も知らない。そこに勝機がある。我々の尊厳はまさに、考えるという一点においてある。立ち上がるべきは思考からだ。手の届かない時間や、満たせない空間から出発してはならない。考えようではないか。これが、道徳の原則だ。(B.347, L.200)」

ブレーズ・パスカル『パンセ』※拙訳で恐縮です。

……こう、とかく西欧は自然を「征服する」きらいが強いですよね。デカルトの時代から変わらず人生に「意味」を求め続けて来ているというか。
訳しておいてなんですが、実は私はこの文章、あまり共感できません。
とりわけ引っかかるのは、植物の葦を「弱いもの」と決めつけて比喩に使っているところです。思考から出発せよと言っている割に、人間の優位性については疑っていない(考えていない)という皮肉さが、冒頭から嗅ぎ取れてしまって……。「一吹きの蒸気、一滴の水だけで、簡単に殺せる」とはなかなか強烈な言葉ですが、興味深いのは、パスカルは17世紀の哲学者だということです。
17世紀と言えば、小氷期の到来で気候が寒冷化、農作物の不作が続いて経済が停滞、魔女狩りが始まったあげく、ペストが大流行した時代です(ちなみに21世紀は、ガス排出量の増加で異常気象に拍車、リン鉱物の枯渇化を目前に農作物も大打撃、金融経済はリセッション入り確実、移民を前にヘイト感情が噴出、コロナウイルスが大流行している時代ですね)
こうした背景を鑑みれば、人々が絶望していたからこそ奮い立てようとしたとも捉えられます。
ただ「今」、私が日々、切々と感じるのは、

「一吹きの蒸気、一滴の水だけで、簡単に殺せる」

――宇宙さえも「攻略できる」という資本主義的発想で、22世紀の文明を「やり直す」のは、もう限界ではないかしらということです。
べつに悪いことだとは思いませんが、農家の娘としては、人間の生にだけ「意味」を求め続けるやり方は、率直に無理があると感じます。
人間だけが意味を求めます。
でも意味なんて無いです。あるわけないですし、あったとしてもそれは、私の短い人生の中では見つけ得ないものだと思っています。

葦は強かです。

七十二候に言い表されていることも象徴的ですが、遥か昔から「変わらず」芽吹き続けています。一方で、農家として(また『王の庭師』の取材の一端として)少しだけ科学的なことを言いますと、草は、食べられたり踏まれることを前提に進化してきているので、そう簡単には死に絶えません。
「一吹きの蒸気、一滴の水だけで、簡単に殺せる」?
とんでもないです。
人間の歴史は、葦に遠く及びません。
その事実をこそ、私は忘れたくありません。

あなたは、次の時代をどう生きたいですか?

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