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あいちトリエンナーレ『表現の不自由展・その後』に思う、すれ違い。

こんにちは、紅龍堂書店(くりゅうどうしょてん)の久利生杏奈(くりゅうあんな)です。

今日こそが「その後」ですね!
文化庁が補助金の再交付を決定したようです。良かったです……政府の意向で「良いもの」と「悪いもの」を分けるというのは、不気味ですからね。しかし当初の金額から減額されていること、コロナウイルスの五輪延長示唆のどさくさに紛れてこそっと前言撤回する姿勢は……ごめんなさい、少し残念です。
以下は雑感です。

あいちトリエンナーレは、私もこの目で全ての会場を観覧してきました。
昔、景康の付き添いで1年間で70館ほど美術館を巡ったことがあるのですが、その時に取材したどの企画よりも、立ち止まって考えさせられる作品が多かったです。とりわけ芸術監督の津田大介氏がジャーナリストだからなのでしょうが、政治色――というよりも、レジスタンス色が濃かったのですよね。
「小さな声を置き去りにしない」
多数派の声が圧倒的に強いこの国で、国内の作家はもちろん、世界各地からも言論弾圧を受けた作家を集めてきた手腕には、率直に脱帽しました。
2019年9月25日に配布された、あいちトリエンナーレのあり方検証委員会の中間報告から引用します。

(検証項目No.59、Q)
「海外でも美術を巡る表現の自由の問題は起きているのか。起きているとしたら、それはどんな国の場合か」

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会『中間報告』p.79

(検証項目No.59、A)
「かなりの頻度で起きている。命を脅かされるような重大な事件は全体主義的な国家や宗教法が支配する国で起きている。加えて、国際芸術展や美術館などの文化施設において、出展作品の解釈を巡って作家やキュレーターと鑑賞者(政治家を含む)の意見対立は、先進国においても珍しくない。
世界の芸術に関する検閲を調査するNPO団体フリーミューズ(スリラック・プリパットCEO、コペンハーゲン)の報告書「The State of Artistic Freedom 2019」によれば:80ヵ国を対象として673の事例を検証した結果、ブラジル、パキスタン、バングラデシュで計4名の芸術家が殺害され、11ヵ国で14名の芸術家が襲撃され、13ヵ国60名のアーティストが投獄(スペイン14名、中国11名、トルコとイランで9名ずつほか)、25ヵ国97名(トルコ20名、キューバ19名、ロシア11名、中国6名など)の芸術家が迫害を受けた。また、2018年、60ヵ国において286件の検閲が確認され(中国15件、アメリカ47件、ロシア24件)、10名が明確な理由なくテロ対策の一貫ということで逮捕され、19名のアーティストが収監された。また、ベラルーシ、エジプト、ジョージア、イスラエル、ニカラグア、ロシア、スペイン、トルコ、アメリカ合衆国などで、テロ対策、宗教やイデオロギーの原理主義者への予防的措置という理由で表現の自由の抑制が行われたとされている」

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会『中間報告』p.79

……この中の全ての人が来ていたわけではないですが、自国に帰れば投獄されかねない作家も来訪されていたのには目を瞠りました。
「当たり前」は、当たり前ではないのですよね。
例えば、私の中では「当たり前」ですが、作家は、訴えたいことがあるから物を作ります。ふわっと綺麗なものを描きたいであったり、漠然とカッコイイ何かを見せたいであったり、承認欲求が動機では、まず評価されません。
特に現代アートの世界では、ともすれば作品それ自体以上に、「コンテクスト」と呼ばれる文脈が重視されます。
やや乱暴ですが、考証に足るレイヤーが多ければ多いほど文化的価値が高いとされるのです。例えば――好き嫌いはありますが(私はどちらかというと苦手ですが)――この原理に則って、計算づくでニューヨークで成功した日本人アーティストが、村上隆です。
アーティストに欠かせない資質は従順よりも反骨精神と言われますが、それ「だけ」では成功しえない世界なのですね。怒りや反駁、悲しみに輪郭を持たせるためにも、最低限のルールがあり、少なくとも展示会に出されるようなものは、そのルールを守っているものが大半です。
(念のため、それでも歴史を変えるような作品は、往々にして「型破り」です。しかしそれも、型を知っているからこそ成せる業です)

一方で、観る側は自由。

これがいつの世も、炎上する理由なのでしょうね……
作り手は体制側に反感があって、そのパッションから「作品」が生まれてくるわけですが、鑑賞者は、問題意識を抱えて尖っている人ばかりではありません。
現状が凪いだ水面だとすると、そこに石を投げるのがアートです。
鑑賞者の感情は波立ちます。
もちろん、「芸術」鑑賞をしたくてわざわざ美術館に足を運ぶような方は、そのことを自覚して、対価を払って波立ちたくて来ているのですが、

インターネット上の人たちは違います。

インターネット上の人たちの「当たり前」としては、例えば、twitterでは「不快なものは見たくない」がスタンダードなのではないでしょうか……
快適な日常空間の延長としてインターネットを使っているのですよね。そんなところに、誰かが勝手に撮影した写真で、不本意にアートが投げ込まれたら、不快感をもよおすのは自然なことです。
主催側はそれを見越して、撮影禁止、SNSへのアップロードも禁止にしていたのですが、残念ながらその節度が守られることはありませんでした。
結果として、『平和の少女像』が「日本ヘイト」などという筋違い(文字通り)な怒りが蔓延してしまったのは、大変惜しまれることです。

素敵な作品でしたから。

『表現の不自由展』の画像シェアは禁じられていますので、中間報告書の一ページを抜粋します。

正直、この目で少女像を見た直後は、

「こんなに可憐な女の子の像一つを『認めない』と、鬼の形相で怒り狂っている大人のほうがよほど醜いですね」

と感じましたが、後から、前記のすれ違いに考え至りました。
ただ、これも文化的素養があれば防げた「誤解」ですから、識字率90%以上の国での出来事としては異常だと認識しています。
昨日は福祉の話をしましたが、同様に芸術も、生きる上でとても楽しい「遊び」ですから、積極的に子どもに教えればいいと私は思うのですが……
学校って、何を教えるのが一番なのでしょうね。

あなたは、どう思いますか?

最後まで読んで頂いてありがとうございます。とっても嬉しいです。
きっとまた、遊びにいらしてくださいね。

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