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偽りの時雨

こんにちは、紅龍堂書店(くりゅうどうしょてん)の久利生杏奈(くりゅうあんな)です。

ピエ・ブックスさんの『てんきごじてん』
翻訳家のW先輩が下さった、宝物のような本です。
眠れない夜によく読んでいます。
慌ただしい世の中に、心が潰れそうになることも多いですが、そんな時は、昔の人が考えていたことに触れると落ちつきます。私が一昨日、助けられた言葉は「偽(いつわり)の時雨」

偽の時雨(いつわりのしぐれ)
――陰暦十月に降る時雨。藤原定家の歌「偽りのなき世なりけり神無月誰が誠より時雨初けん」(『続後拾遺和歌集』)に基づくもの。

PIE BOOKS『てんきごじてん』p.155

「偽(いつわ)りのなき世なりけり神無月(かんなづき)誰(た)が誠(まこと)より時雨(しぐれ)初(そめ)けん」
――現代語訳は、「嘘だらけの世の中だと思っていたけれど、そんなことはなかった。十月になればこうして時雨が降る。誰の誠の心によるものだろうか」
今よりずっと過酷な病の時代にも、こうして空を見上げていた人がいた。
そう思うと、私は救われます。

定家は歌もいいですが、字も美しいのです。
もしお近くで書展が開催されましたら、ぜひ足を――と書きかけて、美術館や博物館の扉が開くのはいつかしらとため息をつきました。
いけませんね。ふふ。
仕事ですが、『王の庭師』の原稿を読んでいると元気が出ます。
口角を上げるために、頬の筋肉を動かそうという気持ちになります。

私がここで書く文章も、誰かの気晴らしになれば幸いです。

最後まで読んで頂いてありがとうございます。とっても嬉しいです。
きっとまた、遊びにいらしてくださいね。

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