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少女たちの受難。児童・思春期精神医学会の男女不平等

児童・思春期精神医療界には、構造的に男女平等が欠落している――女性研究者(スヴェニー・コップ)によるこの告発は、かなり挑発的だった。しばらくすると何人かの聴衆が立ち上がり、出ていった。残っている人たちからは、うなり声やため息が聞こえてきた。私は携帯電話で読んだある一文を思い出した。「人は自分の特権に慣れると、平等が抑圧のように思えてくる」

マレーナ&ベアタ・エルンマン,グレタ&スヴァンテ・トゥーンベリ,羽根由訳『グレタ たったひとりのストライキ』海と月社,2019,pp.128-129

こんにちは、紅龍堂書店(くりゅうどうしょてん)の久利生杏奈(くりゅうあんな)です。
『グレタ たったひとりのストライキ』を拝読して、ここだけは別記事にしなければ字数が足りないと感じました。
児童・思春期精神医学会の構造的欠陥――男女不平等について。
念のため先に記しますが、これは福祉先進国スウェーデンにおいての話です。スウェーデンですらこうなのだ、ということをどうか念頭に置いてお読み頂きたいのです。

私の周りにもADHDとアスペルガーの併存の才媛がいますが、彼女の疾患――と書くことにも個人的には抵抗を感じますが――が解ったのは20代半ばになってから。
どういうことかというと、

ADHDがある「子ども」を対象にした研究だが、その子ども64人は全員男の子だった。2018年の子どもに関する科学的調査は、平等な男女比率をまったく考慮していなかったのだ。
どれほどの知識や見聞があったとしても、女の子に神経精神医学上の診断名を授けるのは容易ではない。男の子用に設計された判断基準に、どうやったら女の子が合致できるというのだろう? 実際、数年前までアスペルガーやADHDと診断された少女はほとんどいなかった。診断に関するあらゆることが、いまだに男の子を基準にしている。判断基準も薬も情報も。男の子の男の子による男の子のための診断なのだ。
言うまでもなく、病気の症状は一人ひとり異なる。女の子に現れる症状は男の子と大きく異なる場合だってある。たとえばADHDの男の子は社交的になりがちだが、女の子は多くの場合、その正反対になる。子どもが診断を受ける最大の理由は、その行為が他人の迷惑になると考えられるからだが、女の子の多くは自分の内に秘めておくことが多いので、病気の発見が遅れる。人々の目にふれない者が助けを得られるケースはとても少ない。

マレーナ&ベアタ・エルンマン,グレタ&スヴァンテ・トゥーンベリ,羽根由訳『グレタ たったひとりのストライキ』海と月社,2019,pp.129-130

私の友人は、絵と音楽の才能に恵まれながらも、整理整頓やスケジューリングが苦手で、幼少期から苦労を強いられていました。
不幸なのは――敢えてはっきり書きますが――父親に知識が一切なく、「母親の躾がなってない」と罵り続けたこと。子育ては母親だけがするものではない、という疑問はさておき、ADHDは躾の問題などでは当然ありません。脳の報酬系、ノルアドレナリンとドーパミン濃度の問題であり、興味のある分野には人並みならぬ力を傾けられる反面、それ以外は不得手という特性です。
以前、日本語を勉強中のカナダのお客さまとこの件についてお話したことがあるのですが、印象に残っているのは「発達障害」という漢字への感想。

「ショウガイ? おかしいです。『障害』というこの字、病気と教わりました。
ADHDは病気ではありません。個性です」

……本当に、その通りだと思うのですよね。
背の高い人がいれば、低い人もいる。それと同じではないのでしょうか。
脳のドーパミン濃度が高い人がいれば、低い人もいる。
背の高い人は吊革に手が届くし、低い人は道端の花に気づきます。
脳のドーパミン濃度が高い人はマルチタスクをこなせるし、低い人は楽しいことにとことん集中して打ち込めます。
問題なのは、背の高い・低いは一目で分かるのに、脳のノルアドレナリンやドーパミン濃度は目に見えない、目視で確認できないということです。
特に女の子は、人にじろじろと見られることを嫌いますから(そもそも幼少期から性犯罪を警戒するように教育されるので、視線に敏感です)、自分の「異変」を認めて人に話すことは相当なプレッシャーがあるはずです。

そういうことをこそ、教えてくれる教育機関はないのですよね。目に見えない友人の個性を、小さい頃に知ることができていたらどんなにかよかったろうと、今、私は思います。
言葉のよいところは、「見えないこと」を、書いて表出させることができることです。……同じくらい、語るべきではないことを暴いてしまう怖さもありますが、それでも。
あなたも、よかったら、誰かに手渡していってくださいね。
こんなに繊細で素敵な人たちがいるんだよ、って。

最後まで読んで頂いてありがとうございます。とっても嬉しいです。
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あなたと、あなたの大切な人の明日が、少しでも穏やかになりますように。
きっとまた、遊びにいらしてくださいね。


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