鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)――コロナウイルスだけでなく、鶏も中国から伝来しました。
こんばんは、店主・景康の友人、遠江(とおとうみ)と申します。
杏奈が療養中につき、代筆です。
武漢のコロナウイルスの感染が拡大しています。お元気ですか。
……と書き出すまでに、小一時間悩みました。
旧暦の七十二候では、今日から5日間は「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」という季節です。「とや」は「鳥屋」と書きます。産卵のために小屋にこもるという意味ですね。現代は養鶏が中心で、スーパーで一年中パック詰めの卵が並んでいますからピンと来ないかもしれませんが、卵の旬は2月~4月です。
鶏の起源はインダス文明。
モヘンジョ・ダロに最も古い遺跡が残っています。
日本に鶏が伝来したのは弥生時代。朝鮮半島を経由して中国から伝わったという説が有力です。当時は食用ではなく、時を告げる鳥として祭祀に使われていました。採卵用に家畜化されたのは江戸時代で、急速に広まったのは明治以降。
ウイルスのような怖いものだけでなく、鶏も中国から伝来したということを忘れないでいたいものです。
杏奈が1月21日に、『世界がもし100億人になったなら』という本のレビューを上げていました。興味深い一節があったので引用します。
飛行機や船による輸送ネットワークがこれほどまでに拡充している現代、トリアゾールへの耐性を持つ菌類病原体が増えているという一行。曰く、「すべての主要な菌類病原体に対する化学薬品のうち、作物の菌類病の退治に有効な化学薬品はトリアゾールだけ」。交通手段に乏しかった95年前ですらスペイン風邪で全人類の3割が罹患、当時の世界人口20億人のうち1億人近くが死亡しているのに、21世紀はどうなるのでしょうね。疫学者の多くは、新たな疾患のパンデミックは起こるか起こらないかではなく、「いつ起こるか」の問題として捉えているそうです。
翻訳日誌 「息子に銃の撃ち方を教えます」――スティーブン・エモット著『世界がもし100億人になったなら』 https://skyroad.asia/days-of-kuryudo/annas-diary/translation/ten-billion/
ちなみにこの本の一番恐ろしいところは、2012年に書かれているところです。44分前に、中国の新型肺炎の罹患者が300人超えになったというニュースが飛び込んできました。私たちは、著者が「私はもうだめだと思います」と悲観的な一行を綴ったその時から、実に8年後を生きています。
飛行機や船の輸送ネットワークを拡充させてきたのは自分たちです。
便利なものだからと使ってきた。
そもそも飛行機も蒸気船も存在しなかった紀元前3世紀に、モヘンジョ・ダロから日本列島まで、鶏が伝播するのが人間の文明です。
顔が見えないインターネットでは、「ウイルス」と記述すると、あたかもそこに存在しているかのように感じられます。
でも現実には顕微鏡で覗き込まなければ確認できません。
面と向かってすら、その人が感染しているかどうかは分からない。つまり、目に見えない。
これは私の個人的な想像ですが、仮にどんなに政府が優秀で、あるいは残酷で、「完全なる封じ込め」を行ったとしても、70億人が生きている地球で目に見えないウイルスの輸送を100%止めることができたかと言えば、不可能だったと思います。
もちろん、もう少しマシな水際対策は打てたろうと思います。
でも失敗した。私個人は現政権には何も期待していないので驚きはないですが、どうしたものだろうとは考え込んでいます。
未知の病原体を前に、帰国者を隔離することは果たして「差別」なのだろうか、とか。ウイルス検査も任意でいいと済ますのは「優しさ」なのだろうか、とか。もしも自分が帰国者であれば、「歩く殺人兵器」とセンセーショナルに呼ばれたくはないですから、しっかり保護措置を講じて欲しい――とか。
台風被害も未知の病原体も「自己責任」で対処しろという政府の存在意義を考えると興味深いです。人間って不思議です。
人権って、本来はどういう意味なのでしょう。
「怖がっても仕方ない」は思考停止なので、慎重に、できれば冷静に備えていきたいと思います。
とりあえず、次も同じ騒動を起こされてはたまらないので、投票は野党に入れるとして……あとできることってなんだろう。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
この文章を公開してもいいかと杏奈に確認したら、私の裁量で構わないと言われたので、このままアップします。
あなたと、あなたの大切な人の心が、いつも穏やかでありますように。
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