虚構と現実の境界を溶かす
こんにちは、紅龍堂書店(くりゅうどうしょてん)の久利生杏奈(くりゅうあんな)です。
覚えておいでか分からないのですが……遡ること9月18日。
紅龍堂は二つの決心をしたと書きましたが、そのうちの一つが昨日、叶いました。
何かというとですね。
古物商許可証を取得しました。
要するに、紅龍堂がリアル古書店になったということです。
幻想書店が、現実へ浸出する準備が少しずつ整って参りました。
古書の他にも美術品や古道具、また現在ベトナムのハイフォンにいる《旅人さん》と協力して、ゆくゆくは輸入雑貨等も取り扱っていきたいと思っています。
ふふ、まだ先の先ですけれどね。
古物の取り扱いには盗品などに対する責任が発生しますから、警察署に申請するのですが、その審査が通るかドキドキしながら二ヵ月ほど過ごしていました。
申請したのは忘れもしない11月2日。
そう、大阪市廃止投票否決の日です。
あの日、否決が決まった瞬間、翻訳家の岸本佐和子さんがTwitterでたった一言、「神はいた」とツイートされていた言葉が凄く印象に残っていて。私も、言葉にすることこそ難しいのですが、感覚として似たような予感があって。直後に控えていた米大統領選も、不思議と全く心配にならなかったのですよね。僅差ではあるのだろうけれど民主党の勝ちを疑っていなくて。これをきっかけに世界の潮流が変わっていくのだろうなというか……
でもそれを、漫然と外側から眺めているのではなくて、自分もその流れの一部になるというか、目に見える形で繋いで遺したいと思って。
行政書士さんにお願いするか悩んだのですが、書類を見る限りそんなに難しくなさそうだったので、自分で申請しました。
警察署の生活安全課の担当者さんにご相談に乗って頂きつつ、一式を揃えて提出した次第です。たぶんこれから申請される方も、WEBからDLしたり書籍を参照するよりも、最寄りの警察署へ行って「古物の申請をしたいです」と聞いてしまうのが早いし、漏れがなくて確実だと思います。
ほとんどの書類は書くだけで済んだのですが、唯一ちょっとだけ大変だったのが「身分証明書」の取得。これは免許証等ではなく公的な書類の名称で、本籍地のある市区町村でしか発行されません。なのでそこだけ遠出が必要でした。
さて。
『王の庭師』は、もうご予約頂けましたか?
辺境、もとい時空の狭間(きっと2.5次元くらい)にある紅龍堂への鍵となるワードは現状四つあるのですが、そのうちの一つが書籍に同梱されている……かもしれません。
無名の出版レーベルの第一作、しかも電子書籍で1,250円というのは強気の価格設定かなと悩んだのですが、最初期から私たちを見て下さっている方はお気づきの通り、弊店は「本」の販売をコンセプトに据えるつもりは始めからないのです。
念のため補足すると、『王の庭師』の内容に関してはこれ以上できない限界ギリギリまでこだわり抜いています。テーマも――とりわけ国内で、10代に読んで欲しい本としては――挑戦的なものだと自負しています。あまり詳しいことはネタバレになってしまうので書けないのですが、実在する団体や人物との関係こそ一切ないものの、特定の業界はこの本の出版は本当に嫌がるだろうな……とまざまざと想像しながら形にしました。大手出版社では忌避されてまず書かれない内容だと思っています。関係者の目に留まったら私も怒られるのだろうなと。
それでも、世に出す必要があると信じたから制作しました。
『王の庭師』というタイトルと粗筋からは想像もつかないというとやや語弊がありますが、硬派で政治色も強い本です。
また、原作が書かれたのは2015年頃なので、COVID-19にまつわる情報は一切出てこないのですが、一方で現代社会の惨状を予見したとしか思えないような描写が数多く登場します。……個人的にも身につまされることが多かったです。
著者のナディアとは光栄なことに友人関係にあるのですが、彼女の先見の明……というよりも、アーレンベルク、ヴィッセン、そしてアジアの島国のハイブリッドならではの視点が強いように感じました。ナディアの人となりはこちらの挨拶から感じとって頂けるかと存じます。
……話が逸れましたが、紅龍堂としては、「本」の内容にこだわるというのは最低ラインで、むしろそこから先、「本」を入口としてどう世界に連鎖的にはたらきかけていくかに興味があるのです。
この発言がどれほどおこがましいかも自覚しています。それでも。
だとしても、こんな気狂いに全精力を傾けられるのは紅龍堂くらいだと思うから。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。よかったら、あなたも私たちの世界に遊びに来ませんか。
久利生杏奈は、ここで変わらず、あなたをお待ち申し上げております。
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