梱包資材は、蝋引き紙を使うと決めたこと
オランダ出身のボイヤン・スラットが18歳でオーシャン・クリーンアップを設立したのは、ダイビングで見たプラスチックごみのあまりの多さに衝撃を受けたことがきっかけだった。TEDxでの彼のスピーチは瞬く間に広がり、約90人の専門家からなるチームがつくられた。40億円以上の資金を集め、アメリカ西海岸とハワイの間にある「太平洋ごみベルト」から世界で初めてプラごみを回収することに成功。その3割は日本由来と見られる(提供 THE OCEAN CLEANUP)
堅達京子『脱プラスチックへの挑戦』山と溪谷社
こんにちは、紅龍堂書店の久利生杏奈です。
脱プラスティックへの取り組みは、「慈善活動」や「趣味」や「カルト」ではなく、人権問題且つ死活問題であり急務という認識でいます。
「海に流出したプラスチックは、海流によっていくつかの場所に集中することが知られている。なかでも太平洋のど真ん中に高密度でごみが集まることは、すでに1980年代からシミュレーションによって予測されていた」(p.30)
「実は試験的に回収したプラスチックごみを解析した結果、国別では日本のごみが最も多かった。文字が読み取れたごみの30%は日本語だったという。東日本大震災など津波の影響も一部あるのかもしれないが、この結果には私も正直、驚いた」(p.31)
「そもそも日本の人口1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量は、アメリカに次いで世界第2位、普段の私たちの生活の中にも、包装など過剰なまでの使い捨てプラスティックが溢れている」(p.32)
堅達京子『脱プラスチックへの挑戦』山と溪谷社
……政治に造詣の深い人権活動家の方でも、環境問題の話になるととたんに顔をしかめたり、怪訝そうに首を傾げる方も少なくないのですが、若輩世代からすると非常に歯痒く、日本の限界であり島国を象徴していると憂慮せざるをえません。
Twitterでは巻き込みリプライなどで議論に関係ない愚痴が飛んでくることも多いので控えていたのですが、やはり小さくても企業が動かないのは怠慢であると考え、この度、書店員様向けのご説明の中で明記させて頂きました。
念のため断りますが、医療器具などのプラスティックの話をしているのではなく、書店の包装の話です。
本は濡れたら読めませんから、ビニール袋を使いたくなる気持ちは解るのですが、それはハワイ諸島やフィリピンマニラ湾やアフリカニジェール川流域で過ごす人の生活を脅かしてまで「綺麗」に包みたいかという話なのです。
私は嫌です。
石油から作られるプラスティックは製造時にも燃焼時にも二酸化炭素を排出します。石油使用量の実に8%がプラスティック原料を作るために使われていることは、もっと知られていいと思っています。
プラスティック資源を循環型に変えるだけで、温室効果ガスの排出量を2~4%削減できるとEUが試算を出しているんです。
でも日本ではまるで報道されない。
アジアで一番プラスティックを消費しているのに。
マイクロプラスティックの問題も深刻です。
クジラやウミガメの胃袋から大量のプラスティックが見つかって「可哀想」という話はよく聞きますが、貝類や魚の胃袋からもプラスティックは検出されています。
グラムに換算すると、私たち人間も毎週5グラムのプラスティックを食べているんです。
それが長期的にどう影響してくるか、まだ解っていません。解らないものを使い続ける恐怖やリスクは、原発やコロナワクチンで嫌というほど味わってきたのではなかったでしょうか。
幸い、世界ではプラスティックを分解する酵素や菌類や幼虫の研究も進んでいて、それが突破口になる可能性はありますが、現時点で未知数であることに変わりはありません。脱プラスティックへの姿勢は、未知数のものを使い続ける文明や資本主義の是非を問う問題だとも考えています。
私は、敢えて危険性・不明性が判明している素材を使わずとも、他に代用できる安全な植物由来の素材があるのならば、そちらを使えばいいという考えでいます。
ですから紅龍堂書店では、本は、蝋引きした紙で包みます。
プラスティックに比べて多少手間はかかりますし、送料も上げざるをえませんが、それでも。蝋は植物由来で安全ですから。
同じ価値観の読者さんに手に取って頂きたいですし、選択肢は多い方がいいと思っています(紅龍堂で買いたくない方は、ご無理をなさらないでください。プラスティックバックを使う書店のほうが全国で圧倒的に多いですし、その状況がすぐに変わるとも思っていません。不安を感じられる必要はありません)
末筆ながら、プラスティックを憎んでいる訳ではありません。
むしろベークライトは凄い発明だと思っています。子どもの頃、化学者ベークランドの伝記をわくわくして何度も読みました。それこそ医療現場を筆頭にどれほどの命が救われたか。感謝がたえません。
だからこそ、そのプラスティックで病人が増えるようになっては、元も子もないし、発明者も悲しむと思うのです。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
きっとまた、遊びにいらしてくださいね。
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